日本一早いマラソンレポート「第14回 渋谷・表参道 Women’s Run」

今年で14回目の開催となる「渋谷・表参道 Women’s Run」ですが、RUNNING STREET 365を立ち上げて8年間で1度も取材したことのない大会のひとつでした。やっぱり女性のための大会という印象が強く、カメラを構えるのはちょっと違うような気がしていたので。

そんな「第14回 渋谷・表参道 Women’s Run」の会場に行こうと思ったのは、毎年大きな盛り上がりになる理由を知りたかったから。百聞は一見にしかずと言いますが、ランニングジャーナリストとしてやっぱり自分の目で見ておきたい、そんな想いを持って大会会場へと向かいました。

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渋谷・表参道 Women’s Runはアクセスしやすい

2024年3月24日に開催された「第14回 渋谷・表参道 Women’s Run」。7時に大会会場がオープンし、8時からオープニングセレモニー、そのあとAブロックが9時にスタートします。ゼッケンなどは事前送付ですので、スタート直前に会場入りしても構いません。

10kmのレースで9時スタートというのはやや早いものの、都心だからアクセスしやすく、しかも会場となる代々木公園は渋谷駅や原宿駅(明治神宮前駅)、代々木公園駅などからアクセスできるので、自宅や宿泊先でしっかり朝ごはんを食べてからでも間に合います。

ちなみに参加者の半数以上が東京都のランナーですが、北海道や沖縄、海外からの参加者もいます。10kmですので1時間前後で走り終えることになりますが、それでも参加するというのは渋谷・表参道 Women’s Runにしかない魅力があるからなのかもしれません。

会場に到着して意外だったのは、会場にいるのが女性ばかりではなかったという点です。思った以上に応援に来ている男性が多く、さらにファミリーランやキッズランもあるので、小さなお子さんの姿も見かけます。もちろん女性ランナーが大多数ですが、「女性のため」を強調しているわけではなく、どちらかといえばフラットな感じがありました。

フラットに感じたのは、5人に1人が初マラソンというのも影響しているかもしれません。第14回 渋谷・表参道 Women’s Runの参加者は約5000人ですが、そのうち1000人が初めてマラソン大会を走る「大会デビュー枠」で参加しています。

何度もマラソン大会に参加している人もいれば、初めてスタートラインに立つ人もいる。同じ「女性」ランナーであっても、それぞれに抱えている想いが違うわけで、でも会場に行くまで私は「女性」という括りでしか大会をイメージしていませんでした。やはり現場に足を運ぶことは大切ですね。

アップダウンはあるけど初マラソンにぴったりなコース

渋谷・表参道 Women’s Runはお祭りのような雰囲気のある大会でもありますが、10kmコースは国内屈指の難コースかもしれません。渋谷や表参道というエリアは坂道がとても多く、それも傾斜がそこそこ厳しくて長い坂が何度も繰り返されるので、タイムを狙うのは難しくなっています。

さらにスタート直前からはAブロックの前方のランナー以外は、しばらく混雑した状態で走ることになります。渋谷エリアは片側1車線を往復で使っているのもあり最初の2kmは周りに歩調を合わせるしかありません。ただ、いつもと違うのは、周りがみんな女性ランナーであるということ。

普段は自分よりも大柄な男性に囲まれて、潰されないか不安を抱えながら走っている人も、渋谷・表参道 Women’s Runでは周りには女性ランナーしかいませんので安心して走れます。周りを気にすることなく、女性ランナーが走りに集中できるというだけでも渋谷・表参道 Women’s Runは存在意義があります。

でも10kmなんて走ったことがないし……と不安を抱えている大会デビュー枠の人もいたかと思いますが、参加者が5000人もいるので孤立することもありませんし、何度も折り返すことになるので、ラン仲間から声をかけてもらいやすいといったメリットもあります。

それでいて最後尾のDブロックでも制限時間が1時間24分もあります。いくらアップダウンがあるとはいえ、きちんと練習していれば完走はできます。もちろん、誰もが理想どおり颯爽と駆け抜けられたわけではありません。最後の坂道で歩いてしまう人もいました。でも、フルマラソンのような消耗はありません。

そう10kmというのは大変な思いをすることになるかもしれませんが、「あと◯kmもある」なんて絶望することはありません。それでいてプレミアム感もあるわけです。学生時代によく歩き回った渋谷エリア、表参道エリアを自分の足で走っている。そう思うと、苦しいはずなのになぜか楽しくなってきた人もいたはずです。

走り終えてすぐに帰らない仕組みがすごい

マラソン大会というのは基本的に、走り終えたらすぐに帰宅するものです。少なくとも一般的なマラソン大会はそうで、アフターはラン仲間と集まって居酒屋に行ったり、遠征先からの戻りの新幹線で一杯やったりするというのがスタンダード。

ところが第14回 渋谷・表参道 Women’s Runは走り終えてからが本番とばかりに、会場内に活気が溢れていました。走ってそこでおしまいではなく、走った余韻をさらにエネルギーに変える仕組みが用意されていて、多くのランナーが会場に留まっていました。

渋谷・表参道 Women’s Runではアフターパーティとして、参加者には1000円分のクーポンを配布。参加者はそれのクーポンで食事をしたり、お酒を飲んだりできるわけです。さらに、協賛企業のブースではさまざまなプレゼントやキャンペーンを用意しており、その順番待ちで行列ができています。

さらにフォトスポットが用意されていて、そちらも行列ができています。会場に到着したときは、参加者5000人に対して、会場のキャパが少なすぎると感じましたが、会場をコンパクトにすることで参加者同士の距離が近くなり、それが熱気となって会場をポジティブな空気が包み込んでいます。

ポジティブな空気で居心地がいいからランナーがそこに留まり、渋谷・表参道 Women’s Runが楽しい思い出として記憶されるわけです。その結果、会場を後にするときには「また来年も走りたい」となり、国内屈指の人気大会という地位を確立していく。

いったい誰がこの仕組みを考えたのかわかりませんが、運営という視点で考えても、渋谷・表参道 Women’s Runはとてもよく考えられています。もちろん100点満点というわけではなく、小さなトラブルはいくつもあったはずです。でも参加者の総評としては「やっぱり良い大会だよね」になるわけです。

渋谷・表参道 Women’s Runは「きっかけ」

自分で渋谷・表参道 Women’s Runを取材するまでは、10kmの大会なのに、なぜこんなにも人気があるのか不思議に思っていました。でも取材をしたことで見えてきたことがあります。

  • 10kmだけど走り応えがある
  • 女性だけなので安心感がある
  • マラソン大会よりもランイベントの雰囲気が強い
  • 「走る」だけでは終わらない

渋谷・表参道 Women’s Runの魅力をまとめるとこんなところでしょうか。でも、これだけではないはずです。同じようなことを他の大会がしようとしても、決して同じことにはならないわけです(名古屋ウィメンズマラソンを除く)。

もっと本質的に他の大会と違うところがあるはずと思いながら、アフターパーティを楽しむ人たちを眺めていたら、渋谷・表参道 Women’s Runの本質は「きっかけ」にあるのではないかという考えが浮かんできました。

大会デビュー枠により走り出す「きっかけ」になり、女性ランナーだけで走ること走ることが好きになる「きっかけ」になる。そして何よりもラン仲間とのつながりを取り戻す「きっかけ」になります。この数年でラン仲間との関係がリセットされた人も少なくなくありませんが、渋谷・表参道 Women’s Runにはそれを修復してくれる力があります。

速く走るだけがマラソン大会ではない。もっと大切なものを見つけるために、もっと大切なものを取り戻すためにスタートラインに立つ。ただし肩の力を抜いて、走ることを心から楽しみながら。そして10kmを走り切ることで人生の何かが動き出す。渋谷・表参道 Women’s Runはそんな大会なのかもしれません。

渋谷・表参道 Women’s Run:https://womensrun.jp

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