日本一早いマラソンレポート「かすみがうらマラソン兼国際ブラインドマラソン2024」

4月の開催ということもあり、シーズン最後のレースとして1年間の総括として走る人が多いかすみがうらマラソン。ただ春の霞ヶ浦は天候が荒れやすい傾向にあり、灼熱のレースになる日もあれば、春の嵐の中を走ることも珍しくありません。

天候が安定しない大会。多くのランナーがそのイメージを持っているかもしれませんが、「かすみがうらマラソン兼国際ブラインドマラソン2024」は、雨粒がときおり肌に触れる程度の曇り空というベストコンディションでスタートしました。

目次

ウェーブスタートだからスムーズに走り出せる

かすみがうらマラソンは1991年に第1回大会が開催された、30年以上の歴史があるマラソン大会です。これだけ歴史がある大会でありながら、新しい取り組みを積極的に取り入れていき、現在はスタートの混雑を解消するためにウェーブスタートを採用しています。

また、10マイルと5kmも同じ場所からのスタートとなりますが、スタート時間をずらし、コースわけもしっかりなされているため、それぞれの種目がぶつかることもなく、フルマラソンにおいても多少の混雑はあっても、スムーズにスタートできるようになっています。

ただし2km地点から急な登り坂になるため、スタートブロックの位置取りによっては序盤はやや混雑するかもしれません。それも3段階のウェーブスタートでにしていることで、以前ほどの混雑はなく気持ちよく走れるようになっています。

他のマラソン大会でもウェーブスタートを取り入れている大会が増えてきましたが、まだまだ限られているのが実情。ただ、かすみがうらマラソンのように制限時間が6時間(かすみがうらマラソンは6時間5分)の大会は、スタートロスや混雑によるロスを減らすためにも、積極的に導入してもらいたいものです。

思った以上に高い気温がランナーを苦しめる

スタートでランナーを見送った後に、10km地点に走って移動したのですが、スタート時にはちょうどいいと感じた気温がゆっくりと上っていき、暑くなりそうな予感。10km地点でランナーの姿を見てみると、すでにバテそうになっている人がちらほら。

ちょうどゲストランナーの有森裕子さんがランナーに声掛けとハイタッチをしていたのですが、「給水をしっかり」とアドバイスしていました。こういう小さなことが大事なんですよね。その声かけでどれだけの人が脱水にならずに済んでいるかわかりません。

曇り空とはいえ、冬マラソンと比べて気温が高いのも事実。完走目標くらいのランナーにとっては、体が冷えずに気持ちよく走れるのかもしれませんが、上位のランナーや後方のランナーでも自己ベスト更新を狙うようなランナーは、かなり暑さを感じたはずです。

しかも2時間を過ぎるくらいから太陽が顔を出してきます。10km地点から30km地点までショートカットをして移動しましたが、SブロックやAブロックの選手でもオーバーペースだったのか、歩いている姿が目立ちます。これが春マラソン、かすみがうらマラソンの難しいところです。

見えないところでしっかりと支えてくれる

かすみがうらマラソンのコースをショートカットしながら走って回ったのですが、走っていて気づいたのはボランティアスタッフや大会関係者がみんな丁寧であることでした。以前も応援で走ったり、自分で出場したりしたのですが、そのときは気付かなかったですが、目の前に起きていることにひとつずつ丁寧に対応しています。

あるエイドでは大会役員と思われるジャケット姿の男性が、エイドの先で捨てられた紙コップを拾って、ゴミ箱まで持っていく姿を目撃しました。目の前に落ちていた紙コップを、拾ってゴミ箱に捨てただけなのですが、マラソン大会においてそれをスマートにできる人は限られています。

こういう人が役員をしている大会なら、大会関係者が丁寧なのもわかるような気がします。それは大会運営の組織がそうなのか、土浦やかすみがうらの人たちの気質がそうなのかはわかりません。マラソン大会の警備にありがちな、強い口調で指示するなんてこともなく、ただ穏やかな時間が大会を包みこんでいるようです。

過去に自分で走ったときに「かすみがうらマラソンはもっと評価されていい大会」と、漠然と感じていたのですが、その理由が今日はっきりといました。大会事務局がかすみがうらマラソンをとても大切にしていて、それでいてランナーを含め、かかわるすべての人をあたり前のようにリスペクトしている。

もちろん100点満点のマラソン大会ではなく(そんなものは世界中どこにもありません)、何らかの不満を感じている人もいるとは思いますが、基本スタンスがブレることなく、よりよい大会にするために試行錯誤もしています。ただ記録は狙いにくく、悪天候にもなりやすいのでRUNNETの評価は低めになっていていますが、点数では測れない魅力がかすみがうらマラソンにはあります。

タイムよりも走り切ることで満足感を得られる大会

かすみがうらマラソンの難点はなんといっても記録を狙いにくいことにあります。マラソン経験が浅い人なら自己ベスト更新もできるかもしれませんが、サブ3.5やサブ4を達成した人が、かすみがうらマラソンで自己ベスト更新をするなら、かなりの練習量を積み、なおかつ幸運に恵まれなくては記録は望めません。

でも、応援しながら沿道を走っていて、ひとつの疑問が頭に浮かんできました。人はなぜフルマラソンを走るのか。ランナーが走り始める理由はそれぞれですが、共通しているのが「何かを変えたかった」からではないでしょうか。走るという行為はとてもポジティブなもので、心身ともに健全な状態に導いてきます。

でもかすみがうらマラソンの30km以降のランナーを沿道から見ていると、少なくともそこには「体の健全」は1ミリもなく、ただただ体を酷使しているだけのように見えます。それでいて自己ベストを出せるわけでもありません。走ったことのない人にしてみれば理解不能な世界です。

もしマラソンを走る理由がタイムを出すことだけなら、おそらくかすみがうらマラソンは誰も参加しない大会になってしまい、いつの間にかマラソンの歴史から姿を消してしまうでしょう。でも実際にはそうはならず、むしろ根強いファンがいます。

フルマラソンを走るうえで、タイムというのは思った以上にどうでもいいことなのかもしれません。確かに自己ベスト更新は気持ちがいいものですが、狙ったようなタイムで走れなくても得られるものがある。少なくともかすみがうらマラソンでフィニッシュラインを超えていったランナーはそれを手にしたはずです。

いや、超えられなかったとしても得られるものがある。だから私たちはフルマラソンを走ることをやめられないのでしょう。かすみがうらマラソンはタイムだけがすべてではないことを、走ることで心が満たされるということを思い出させてくれる。そんなマラソン大会なのかもしれません。

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