まだまだ知名度が低いものの、階段を駆け上がるタイムを競うレースの裾野が徐々に、そして確実に広がりつつあります。本日開催された第16回 東京タワー階段競走は参加者が約500名近く。たった数分のレースのために、早朝から多くのランナーが東京のど真ん中に集合しました。
東京タワーの階段数は約600段。トップ選手はこの階段を2分10秒台で駆け上がっていきます。ただ、階段競走で重要なのは誰かに勝つことではなく、逃げ出したくなる自分に負けないこと。そんな弱い自分と向き合うことになる東京タワー階段競走についてレポートします。
スタート地点が多くの参加者で溢れかえるほどの大盛況
今回、会場に入ってまず感じたのは「人が多い」ということでした。この会場に来るのは2回目ですが、前回はもっとスペースに余裕があったような気がします。それくらい東京タワー階段競走や、階段レースそのものが注目されているということなのでしょう。
階段レースは手軽な競技で、東京タワーの場合には2〜10分でレースが終わるので、フルマラソンのように痛みや苦しみに長時間耐える必要がありません。普段あまり運動していないという人も、「ちょっと出てみようかな」と思える手軽さが人気の理由かもしれません。
東京タワーは東京のシンボルで、レースに関係なく「1度は階段を上ってみたい」という潜在的参加者はかなりの人数いるはずで、そういう人たちにその存在がゆっくりと広まっているのでしょう。さらにテレビのバラエティ番組で東京タワーの階段を上がるという企画があったのも影響しているはずです。
いずれにしても、これまでにない大盛況な状態になっており、階段レースの夜明けになるのではと感じさせられる活気ある雰囲気が会場に漂っていました。まずは階段レースならではの難しさ、奥深さを知ってもらうために、東京タワー階段競走はその入門として最適な大会なのかもしれません。
簡単に見えるけど奥深い階段競走
スタート前には大会のMCで階段垂直マラソンの世界チャンピオンでもある渡辺良治さんが、「前半飛ばさないこと」と注意喚起をしていましたが、初挑戦かつ走力に自信がある人ほど、スタートで飛ばしすぎているようでした。そして200段もいかないうちに後悔する。
3分以内に走れれば、かなり速いタイムとなるわけですが、約600段あることを考えると、1分間に200段上ればばいい計算になります。200BPMとなると、かなり速いペースになりますが、実際には1段飛ばしもできるので、BPMは160くらいでもいい計算になります。
それなのに、多くの人が180BPMよりも速いペースで飛び出していきます。そして、見事に撃沈するわけですが、そこが階段競走の面白さでもあります。たった3分くらいなんとかなると思って勢いだけでいくと潰れてしまいます。だから、頭を使って登らなくてはいけません。
ただ階段を駆け上がるだけなのに、想像以上に戦略が技術、経験を求められます。簡単に見えるけど奥深く、それに気づいた人ほど記録が伸びていきます。そう、東京タワー階段競走は何度も挑戦することが重要で、たくさんの失敗を積み重ねて、ようやく1人前の階段ランナーになれます。
500人の参加者は少しキャパオーバーかも
500人近い参加者が集まったとお伝えしましたが、正直なところキャパオーバーになっている感じもありました。参加者からは「受付にかなり時間がかかった」という声があり、さらにレース後には完走証の受け取りに大行列ができていました。
運営の説明では通信状況が悪かったとのことですが、完走証についてはプリンターが2台体制で、1人15秒で渡せるとしても、単純計算でも1時間以上かかることになります。レースは50分ですので、終わった人から順に受け取りにきてくれれば成立するのかもしれませんが、実際にはそうならず大行列ができてしまいました。
もっともこれはプリンターが3台あればまったく問題のないことなので、次回以降は改善されるとは思います。ただ参加者が多いと、スタート間隔も短くなり(実際に以前よりも短かったかどうかはわかりません)、追い越し時の接触などのリスクも高くなります。
きっとこれ以上参加者数を増やすことはないのでしょうが、これから出場するという人は、ちょっと窮屈感があることは頭に入れておき、当日朝の受付や完走証の受け取りなども、早めに行動するように心掛けたほうがいいかもしれません。
東京の中心でオールアウト体験ができる
参加者が多くて受付や完走証の発行に時間がかかったという課題はありましたが、やはり東京タワーでオールアウトできる経験というのはとても貴重で、どのような走力の人でも気持ちがいいものです。体力がある人は「次回はもっと」となりますし、途中で息が切れた人は「もっと体力をつけよう」となります。
いずれにしても向上心につながるうえに、東京タワー階段競走は1年に2回開催されるので、1年に1回しか開催されない階段レースと比べると、高いモチベーションを維持したまま次回に向けてトレーニングできるといったメリットもあります。
ただ、日本国内だけでもいくつかの階段レースがあります。東京タワー階段競走はその入口。まだまだ奥深い世界が広がっているので、東京タワーで階段の面白さに目覚めた人たちは、他の階段レースにも出てもらいたいところです。そして、階段レースの知名度がもっと高まることを期待しています。
階段にはそれだけの魅力もポテンシャルもあります。東京のど真ん中で立ち上がれなくなるくらい全力を出し切ることで、また新しい扉が開かれていく。そんな体験をしたいという人は、ぜひ東京タワー階段競走にエントリーしてください。次回は12月の第2日曜日とのこと。詳しくは公式サイトをご確認ください。
東京タワー階段競走:https://tokyotower-kaidan.com