第1回の開催となった昨年は、制限時間4時間の大会で、思わぬ気温の上昇もあって完走率は男性73.6%、女性56.2%で、35km以降は完走が難しくなったランナーが次々と倒れ込むなど、厳しい大会というイメージを定着させてしまいました。
昨年は首都圏ということもあり道路の封鎖時間に限度があるということで、4時間のレースになりましたが、今年はコース変更を行うなどして6時間の大会として再スタートを切ることになりました。
実は6時間制限にしたいという希望は昨年からあったもので、さいたま市長は昨年から、制限時間を伸ばして自分も走りたいと言っていました。そしてその市長の希望が叶い、そして市長も念願のスタートラインに立つこともできました。
昨年の評価を覆すための、リスタートの大会となった第2回さいたま国際マラソン。さいたま国際マラソンは新しく生まれ変わることができたのか、そんな視点で第2回さいたま国際マラソンをレポートしていきます。
参加費15000円は妥当な金額か
さいたま国際マラソンの参加費は15000円です。受益者負担を公言している横浜マラソンと同じ金額です。その観点から考えると、大都市でマラソン大会を開催しようとするとどうしてもこれくらいの金額は必要になるのかもしれません。
東京マラソンは10800円で出来ているじゃないかと思うかもしれませんが、そのほとんどはスポンサー費や税金で成り立っています。さいたま国際マラソンは国際マラソンとはいえ、昨年の評価を考えるとスポンサーは東京マラソンほどは集まりません。
1人にかかる費用はそれほど変わりませんので、大赤字にならないようにするためにも、15000円の参加費になるのですが、おそらくほとんどの参加者は「これで15000円?」となっているはずです。
その内訳を見たわけではありませんが、今回沿道からレースを見ていて感じたのは警備とボランティアスタッフの多さです。ボランティアは人件費がかからないと思っているかもしれませんが、スタッフジャンパーなど思った以上に費用がかかります。
この金額に納得できるランナーは少ないかもしれませんが、さいたま国際マラソンをこの規模で開催するのであれば、15000円はどうしても掛かってしまう費用です。ただ、この金額が来年以降の人気に大きな影響を与えるのは間違いありません。
大会を盛り上げようという意気込みを感じる
昨年の大会はなかったことにしたいのか、昨年とはまったく違ったスタートになりました。メイン通りを大きく使って、盛大に大会を盛り上げようという雰囲気は伝わってきます。
おそらく東京マラソンのスタートをイメージしたのかもしれません。大規模な都市マラソンには珍しく、スタート地点近くではランナーのすぐ近くにまでいって、声を送れるようになっていました。
ボランティアスタッフも懸命に声を出していましたし、昨年とは違うんだという気持ちは伝わってきます。ただ、それが唯一の救いかもしれません。
運営側の一体感というのが少し薄いように感じます。運営のトップにいるはずの県知事とさいたま市長ですが、県知事の挨拶のなかで市長が走ることに対してどこか他人行儀なコメントを感じました。
各スタッフもあまり連携が取れていない感じがあり、盛り上げたいという気持ちがどことなく空回りしているようでもあります。
あらゆる動線がおかしいように感じる
今回はランナーとしてではなく、観戦者側の視点で取材をしていましたが、とにかくこの大会は動線が複雑で、どうしてこうなったのだろうと首をひねることが度々起こりました。
どうやらそれは観戦者側だけではなく、参加者も同様らしく動線がおかしいという声をいくつも聞いています。
先ほど紹介したスタート地点のランナーそばの応援ポイントは大きなスペースがあるにも関わらず、人はあまりいない状態でした。そこにどうやっていいのかわからないためです。
さいたま新都心を使い慣れている人には簡単でも、そうでない人にはとてもたどり着けません。あらゆる場所を封鎖して、人の流れをコントロールしようとしたのかもしれませんが、とても応援しづらさを感じました。
一事が万事ではありませんが、行きたいところに行けない場面が目立ちました。ランナーファーストならそれはそれで仕方がないのですが、どちらかというと運営者ファーストを感じたところが気になります。
コースは好みが分かれるが声援は期待できない
さいたま国際マラソンのコースは厳しいと、リオ五輪の選考レースになったときも話題になりました。結果的にこのレースで日本人トップだった吉田香織さんは、リオ五輪のメンバーには選ばれませんでした。
ただ、市民ランナーにとっては起伏が好きな人もいます。コースそのものは好みが分かれるという程度の認識でよいかと思います。
ただし、沿道の声援に対して東京マラソンのような声援を期待することはできません。ひとつは有料道路を走るということで、声援が途切れる区間があるということ。そしてそもそも応援に行けない場所が多いということです。
8km地点の駒場運動公園から東に向かって走るのですが、この区間へのアクセス方法がありません。バスは止まっていますし、電車の駅も埼玉スタジアムのある浦和美園駅くらいしかありませんので、この区間は地元の人が応援してくれることになります。
住宅地を抜けている間は声も聞こえてきますが、孤独な戦いになる時間も多くなります。なおかつ埼玉県の県民性でしょうか、あまり声を出して応援するというよりは、静かに見守るタイプの方が多かったように感じます。ゴール前でも拍手もなく、声援も少なめです。
エイドはシンプルで競技性重視
昨年は制限時間4時間の大会でしたので、エイドに給食はほとんどなかったか、まったくなかったかのどちらかですが、基本は水とスポーツドリンクのみでした。
今年は6時間制限ですので、エイドにはバナナやお菓子などが並んでいます。ただし、最初の給食エイドは27.5kmで、パンなどの最も充実したエイドがあるのは37.5km地点です。
まるでマラソンを知らない人が設定したような配置です。残り5kmを切ったところでパンやクッキーをを食べても何の栄養にもなりません。消化して吸収する前にゴールにたどり着きます。
15000円を払ってこのエイドかと思った人も多いかと思います。ただ、このさいたま国際マラソンは昨年の制限時間が4時間であったり、オリンピックや世界選手権の選考レースだったりと、競技性の高い大会がベースになっているため、走っているときの給食の重要性まで頭がまわらないのかもしれません。
トップランナーがいかに気持ちよく走れるかを優先して、5時間や6時間で走るランナーのことは後回しなのだと考えれば、こうなってしまってもおかしくないかなというのは感じます。
ただし、今年はさいたま市長が走っていますので、実際に自分の足で走って、他の大会と比べて、エイドがどうだったのかなど直接感じられたかと思いますので、来年以降の改善を期待したいところです。
結局さいたま国際マラソンはどうなのか?
厳しい目で見れば、来年はなかなか定員に達しなかった今年よりも人気が落ちてしまうことになるかと思います。昨年の低評価を覆さなくてはいけない大会でしたが、むしろ昨年よりも評価を下げてしまった可能性があります。
昨年は参加者がサブ4ランナーで、あまりホスピタリティを求めていなかったから、それなりの評価をしてくれた人もいましたが、プラス1万人はもっと幅広い視野で大会を評価します。
しかも様々な大会に出ている人が増えていますので、参加してよかったという大会をひとつやふたつくらい経験しているものです。その場合は、その素晴らしい大会と比較されることになるため、現段階では厳しい評価が予想されます。
なんとかしようという気持ちが空回ってしまった結果だと、観戦者という視点では見られますが、実際に走った人たちはさいたま国際マラソンをどう評価するかを考えたとき、また走りたいと言う人はきっと一部の地元の人たちくらいかもしれません。
さいたま国際マラソンはエリートのための大会にするか、それとも市民ランナーのためのマラソンにするのか、明確にしたほうが良いかもしれません。
首都圏から日帰りで参加することができるフルマラソン。人気が出るための要素を兼ね備えている大会ですので、今後の進化に期待したい大会です。低評価から評価を改善して人気の大会になったマラソン大会はたくさんあります。さいたま国際マラソンもその大会のひとつになることを願っています。
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