日本一早いマラソンレポート「鹿児島マラソン2017」

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さすが「薩摩77万石」と、ただただ感心するしかないほど、鹿児島マラソン2017は完成度の高いマラソン大会でした。とても2回目の大会とは思えないほどの、落ち着きようで、どっしりと構えた対応にランナーは必要以上のストレスを感じることなく42.195kmの距離を走ることができます。

今回の大会で、唯一マイナス点がつくとすればトイレの混雑ですが、これは冷たい雨によって、想定以上にランナーがトイレを利用したためで、気温があと3℃違えば、十分なトイレ数だったように感じます。

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例えばRUNNETの評価などで、天候が晴れなのか、それとも雨なのかという理由だけで大会の評価が大きく変わることがありますが、天候ばかりは運営側ではどうしようもありません。もしかしたら今年は評価が伸び悩むかもしれませんが、ではどこが不満だったかを確認しても、マイナスになる要素がまったくありません。

5時間30分を超えるランナーが、銘菓かるかんを食べられなかったくらいでしょうか。とはいえ、これも気温の低下と雨により低体温症に近い症状になった人が多かったため、本能的に糖分を摂取しようとした結果のように感じます。

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そして、できることならという部分で言えば、隣県の熊本城マラソンともう少し連携して、どちらの大会にも出られるようにすると、地元のランナーにとっては嬉しいのではないかと思います。

青島太平洋マラソンと熊本城マラソン、そして鹿児島マラソンが連携をすると、これはかつてない規模の、マラソンイベントになるはずです。3つの大会を出やすくして、1年に3つ完走した人にはグランドスラムで特別な表彰をされるなど、できることはたくさんありそうです。

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ただ、それは未来の話でもかまいません。現段階で、鹿児島マラソンには他の大会にはない魅力と完成度があり、非の打ち所がないため、もっと未来の話を出すしか、こうした方がいいのではないかという点が見当たりません。

鹿児島マラソンの魅力は、鹿児島市民を巻き込んだ大イベントに仕上がっていることです。もちろん鹿児島ほど大きな街になると、マラソンに興味ない人も大勢いるかと思います。それでも「これは鹿児島市をあげてのお祭りです」という方向性がはっきりしています。

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実はこういう大会は関東の大会ではあまり見られません。東京マラソンは別格として、例えば横浜マラソンもさいたま国際マラソンも、自治体が行う数あるイベントのひとつに過ぎませんが、鹿児島に限らず地方都市では自治体のトップが旗振りを行って、全力で取り組んでいるため、自然とみんなが興味を持ち、大会も盛り上がります。

鹿児島マラソンで面白いなと感じた取り組みは、繁華街である天文館の路地で、焼酎の振る舞い酒イベントを行っていたことです。酒蔵が路地のあちこちで、無料の振る舞い酒を行っています。

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その企画そのものも面白いのですが、この振る舞い酒はランナーじゃなくても気にせず飲ませてもらえます。小さいことは気にするなと言わんばかりの大盤振る舞いです。こういう気前の良さ、古き良き時代の日本がここにはあります。

ただ、この振る舞い酒イベントが開催されていることを、ほとんどのランナーは知らないのではないでしょうか。また来年出ようと思っているランナーや、来年初めて出るというランナーで、お酒が大好きだという人は、振る舞い酒イベントを覚えておいてください。

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さて、ようやくここからはレースの内容ですが、すでに紹介したように、天気予報は午後からの雨だったにも関わらず、スタートの整列時間から小雨がパラツキ始めます。きちんと雨対策をしている人もいれば、雨までに帰ってこようと無防備なランナーもいます。

1万人のフルマラソンランナーと2000人のファンランランナーは、整然と各ブロックに並びます。こういうときは人をかき分けてでも前に行こうとする人がいるものですが、少なくとも後方のブロックにはそういう人はいません。こういうところでも県民性が出るのかもしれません。

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スタートしてから南下して、そこから北へ北へと向かっていきます。市街地を走っている間は沿道の声援が多く、多くの人が家族総出で沿道に並んでいます。雨が降っているにも関わらず、小さな子までもがレインコートを着て応援してくれます。

ただし、それも10kmくらいまでで、そこからは海沿いの道をひたすら北上するのですが、人があまり入れない場所ということもあり、声援はボランティアの人たちが中心です。でもランナーが飽きないようにダンスの演出があったり、音楽を流したりと様々な工夫がされています。

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あいにくの天気でしたので景色がいまいちでしたが、これが晴れたらどうなるのだろうというくらいの絶景ポイントを何度も走れます。

そして、本来なら退屈しそうなポイントに、とびきりハイテンションの高校生ボランティアを配置することで、雨に負けそうになるランナーに元気を与えてくれます。こういう細かく計算されているサービスが随所に見られるのが鹿児島マラソンのすごいところです。

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海からの応援があったり、電車からの応援があったりと本当に飽きることなく走り続けることができます。折り返し地点の姶良市では、またしても沿道を地元の人が埋め尽くして声援を送ってくれます。

ただしこのポイントが25kmくらいになり、このあたりから低体温症が発生している人が増え始めます。救護室ではタオルに包まって寒さに耐えている人も目立ち、自主的にリタイアをする人が目につくようになります。

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想定よりも早く降り出した雨は、雨脚も強くしかも冷たい雨だったこともあり、ランナーの熱をどんどん奪っていきます。雨の準備をしっかりしていたランナーはなんとか耐えられるのですが、初マラソンのランナーはそうとう厳しかったはずです。

ただ、繰り返すようですが、天候ばっかりは運営側ではいかんともしがたく、そして低体温症になっている人へのフォローもしっかりできていたように感じます。いたるところに救護隊がいたため、ランナーに異変があったときの対応も迅速でした。

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そして残り3km以降の声援もランナーにとっては、本当に嬉しいことで、何時間も雨の中、応援を続けてくれていると思うと頭が下がります。応援に来てくれている人もそうですし、ボランティアさんもあの冷たい雨の中、傘もささずに自分の仕事をきちんとおこないます。

しかもその上でランナーに声援を送り続けるのです。簡単なことのようで、これは決して簡単ではありません。特に高校生のボランティアさんは笑顔を絶やすことがなく、走っていても自然とこちらまで笑顔になります。

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そして大勢の人に見守られながらのゴール。そこからの完走証をもらうまでの動線はやや長いものの、無駄があるわけでもなく、メダルや給食、チップの改修までをスムーズにしてもらえます。

完走証をもらうまでちょっと行列になりますが、これくらいはどの大会でもあることですし、許容範囲でしょう。その後は温かい豚汁やおにぎりが振る舞われ、足湯なども用意されています。マラソンのイベント広場ではビールや軽食の販売もあります。

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完走証はクリアファイルに挟んでもらえ、しかも雨に濡れないようにとビニール袋も用意されています。鹿児島マラソンは日本中のマラソン大会から多くのことを学び、ものすごい準備の上に開催されている大会であることをいたるところに感じます。

それに加えて、鹿児島はとにかく食べ物が美味しい場所ですので、レース後の打ち上げも満足できるはずです。旅ランといえば北海道マラソンやNAHAマラソンの知名度が高いのですが、鹿児島マラソンも決して両者に負けていません。

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LCCも多く飛んでいますし、ホテルも決して高くありませんので、鹿児島マラソンは旅ランにおすすめの大会です。マラソンシーズンまっただ中にあるため、シリアスランナーは旅ランという気分では参加しにくいかと思いますが、マラソンと旅を楽しみたいランナーはぜひ鹿児島マラソンへの参加を検討してください。

来年の大河ドラマは「西郷どん」ということで、鹿児島の注目度が高まることが予想されます。鹿児島マラソンそのものも年々倍率が上がっていくはずです。参加するならいまのうちです。

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ただし参加するときは最低でも2泊3日でのんびりしていきましょう。鹿児島は見どころが多すぎて、1泊2日のマラソンでは何も見れずに帰ることになります。それはとてももったいないこと。ぜひ1日有給休暇を確保して参加しましょう。

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