今年のハセツネ30Kは前日までの降雪と、コース内の法面の崩落の影響により17kmに短縮されました。ハセツネ30Kは上位1000人に入るとハセツネ本戦への出場権が得られます。このため、トレイルランナーの間では、ハセツネへの最短切符として、高い人気のある大会です。
ところがこのハセツネ30Kは、加熱しすぎているハセツネ本戦とは違い、山を走ることの楽しさを普及させるために開催されています。そのような思いがあるものの、ハセツネ本戦に出られるということもあり、こちらも真剣勝負の場として、注目を集めています。
そんなハセツネ30Kは、冒頭で紹介しましたように、30kmの距離が17kmに短縮されました。もともとハセツネ30Kはスタートからの10kmがロードで、そこまでの位置どりで順位が大きく変わると言われている大会です。今年はさらにその傾向が強まっています。
後半の約1キロもロードですから、トレイル区間はたったの6kmしかありません(4kmくらいでは?という声もあります)。
トレランは自然と向き合う競技ですので、天候だけはどうにもならない問題なのですが、開催時期変更を余儀なくされたUTMFといい、改めてトレラン開催の難しさを感じる開催となりました。
スタートは定刻通りでしたが、昨年よりも気温が低く、桜どころかまだ梅が咲いています。山の上には雪が見えるくらいの涼しさ。ある意味、絶好のレース日和です。ただし、前日までの雨の影響で、路面はかなりのスリッピーな状態。
とはいえ、ロードでほとんどの順位が決まってしまうため、トレランシューズではなく、ロード用のシューズを履いているランナーも目立ちます。最近のトレランシューズはかなり軽量化されているとはいえ、ロードを走るにはやはり不向きです。
号砲とともにスタートした、ランナーはいきなりのハイペース。かなりのハイペースでのレース展開が予想されます。17kmですから、トレランなら2時間を切るくらいが優勝の予想タイムと思いきや、超高速レースになる予感が漂います。
実際に優勝者のタイムは、男子が1時間5分59秒、女子が1時間16分2秒という、ロードでの大会のようなタイムでゴールしています。
上位ランナーはかなり心拍数を上げた状態で、残り1キロの下りを駆け抜けていきました。勢いあまって、曲がりきれずに転倒するランナーもいれば、バランスを崩して木に衝突してしまうランナーもいます。
特にロード用のシューズを履いている人ほど、足を滑らす傾向にあります。ロードが多くても、やはりウェットなトレイルを走るのであれば、トレランシューズを選びたいところです。勝ちに行った結果のケガなら仕方ないと、割り切れないくらいの大ケガにつながる可能性があります。
もちろん、それくらいの気持ちがないと勝てないのかもしれませんが、命がけで走るというのは、ハセツネ30Kの趣旨からは大きく離れてしまいます。ハセツネ30Kはあくまでも、ハセツネ本戦の入門編という位置づけであり、1分1秒にこだわるにしても限度があります。
17kmという短い距離になってしまったことがその原因ですが、これに関しては誰を責めるということはできませんし、これがトレランの世界です。開催できただけでも、主催者のファインプレーです。前日での判断が難しかったとは思いますが、ベストの判断だったのではないでしょうか。
ただし、ゴールしたランナーたちの渋い表情は、不完全燃焼の気持ちがよく表れています。
物足りなさはあるものの、その気持ちをどこにもぶつけることができません。この大会のために日本各地からランナーが集まっています。たった2時間のレースを走るために、わざわざ東京に来たわけではない。そういう思いが伝わってきます。
会場に入ってコース短縮を知った人も多かったようです。レース中に気づいていない人もいました(それはそれで、どうかと思いますが)。
道幅などの問題から、スタートの整列順がそのまま最終順位になってしまったやるせなさ。
自然と向き合うトレランは、思い通りにならないことばかりです。自分のペースで走りたくても、レースでは渋滞して思うように走れない。悪天候により今回のようにコース短縮が発生する。
そんな不自由と向き合うことがトレイルランニングの本質です。
UTMFやハセツネといったメジャーな大会以外でも、コースの短縮やレースの中止というのは、決して珍しいことではありません。1年間このために頑張ってきても、天気がちょっと違うだけで、その努力を発揮できないというようなことがあります。
だからこそ山は面白い。
願わくば今日のハセツネ30Kを走ったすべてのランナーが、そう感じてもらいたいところです。重ねてきた努力は決して無駄なことではありません。必ず次につながりますし、タイムはともかく今日は今日で、自分のベストを尽くせたはずです。
今年のハセツネ30Kは、制限時間を1時間残して参加者全員が完走しました。それはそれで素晴らしいことです。数名のケガ人は出ましたが、このコンディションでハイペースのレースです。無事開催でき、なおかつ全てのランナーがフィニッシュラインを超えたこと。
走り足りない気持ちは、それぞれが、これからのトレランシーズンに向けていくのでしょう。トレランシーズンは始まったばかり。ランナーは気持ちを切り替えて、そしてすべてのトレランイベント開催者は、同じようなことが起きたときにどうすべきかを考えて、最高の1年にしてもらいたいところです。
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