熱中症対策としては、気温が高い時間に走らないことと、適度な給水が基本となりますが、この数年注目されているのが「手のひらを冷やす」という手法。人間の手のひらにはAVA血管というものがあり、そこを冷やすと血液が冷えて、冷たい血液が体内を巡って体温を下がります。
ただ、冷やせれば何でもいいというわけではなく、温度管理がとても重要になります。そこで、今回はAVA血管を正しく冷やすことに特化した、デサントの「コアクーラー」を実際に使用してジョグをしてみたので、その内容をレポートします。
12℃で手のひらを冷やせば体温が下がる
私たちの手のひらと足裏、そして顔の一部にはAVA血管と呼ばれる、体温を調節するための特殊な血管が通っています。寒いときにはAVA血管が収縮して末端への血流を減らし、熱が逃げるのを防ぐといった役割があるのですが、AVA血管は皮膚下の浅いところにあるため、直接温めたり冷やしたりできます。
冬の寒い日に缶コーヒーを両手で包み込むと、体全体が暖かく感じるかと思いますが、それはAVA血管で血液が温められて、その温められた血液が体内を巡るので、自然と体温が上がって寒さを防げるというわけです。デサントのコアクーラーはその真逆の動きをします。
温度が下がった保冷剤をAVA血管に当てて、血液を冷やしてやることで、冷たい血液が体内を巡り、血管を通じて体全体を冷やします。冷やすだけなら氷や普通の保冷剤でいいのでは?と思うかもしれませんが、残念ながら普通の保冷剤だとAVA血管が冷やされ過ぎてしまいます。
あまりにも低い温度で冷やすと、私たちの血管は収縮して血液が流れにくくなるので、血液を冷やしたところで、その冷やした血液が上手く体を巡らず、むしろ逆効果になってしまいます。そうならない適温が12〜15℃といわれており、コアクーラーは「12℃で冷やす」ことに特化したアイテムなのです。
握りにくくはないけど端が少し気になる
コアクーラーを使うには、まずは付属の保冷剤を冷凍庫で2時間程度冷やします。ここで気をつけたいのが冷やすときの形状です。雑に冷凍庫に放り込むと手でつかみにくい形状で固定されるので、できるだけフラットな場所で薄い状態にして冷やしましょう。
使い方としては、トレーニング前に使って先に体温を下げておく方法と、ランニングをしながら体温を下げる方法、そしてトレーニング後のクーリングダウンに使う方法があります。私はまだ効果を信用していなかったので、よりダイレクトに効果が出そうな、走りながら冷やす方法を採用してみました。
保冷剤をアタッチメントに装着して、そのアタッチメントを手にはめるだけ。軽く握るようにして走ることになるわけですが、ちょうど握れるサイズ感なので違和感はほとんどありません。ただ保冷剤のように四角く、縁がヒラヒラしているのが少し気になります。
もしかしたら保冷剤の縁をハサミなどでひと回り小さくカットしておいたほうが、ストレスが少なくて済むかもしれませんが、そうなると強度や耐久性が落ちてしまいそうなので、今のところ我慢しています。
冷たさを感じられるのは20〜30分程度
装着するとすぐに手のひらがひんやりするのを感じます。普通の保冷剤のようにキンキンに冷やすというよりは、薄っすらと冷たい感じです。これくらいで効果があるの?と疑問に感じるくらいですが、おそらくそれくらいがちょうどいい温度なのでしょう。
試したタイミングでは気温が30℃以上あったのですが、面白いもので「暑くてやばい!」という感覚はありません。むしろ体の深い部分はとても落ち着いていて、安全地帯で走っている感覚があります。体の表面は太陽の熱で温められているのですが、その熱が体の深い部分にまで侵入してきません。
暑い中を走ると集中力が途切れやすいのですが、深い部分が落ち着いているので集中力は高いまま。30℃もあるのでそれなりに汗はかきますが、とめどなく流れるというよりは体の表面をさっと濡らす程度で、それも体温をしっかりと下げてくれる感じがあり快適です。
ただし、コアクーラーそのものの冷却効果は20〜30分程度でなくなります。役割を終えたコアクーラーは温くてアタッチメントも熱がこもるのでやや不快。そのまま装着し続けるのではなく、効果がなくなったら外してポケットに入れておくのがおすすめです。
20〜30分で冷えなくなるのでは意味がないのでは?と思うかもしれませんが、それはコアクーラーが役割を終えただけで、血液そのものは冷却済みの状態になるので、体が冷えた状態はしばらく続きます。1時間ジョグ程度なら最後まで暑さを感じることなく、気持ち良く走れました。
持っていないよりも持っていたほうがはるかに快適
これさえ持っていれば熱中症対策はOKというアイテムではありませんが、トップアスリートも採用しているだけあって、しっかりと体温の上昇を防いでくれている感じはあります。集中力が続くので惰性のジョグにならずにすみますし、不注意でケガをするリスクも下がりそうです。
何よりも嬉しいのが走り終えてから、これまではずっと体が火照っている状態で、なかなか落ちつかなかったのが、すぐに通常状態に戻れるということ。今回は30℃前後の気温だったので、それ以上になると同じ効果を得られるかはわかりませんが、少なくともないよりはマシ(そもそもそんな気温で走るのはNG)。
欲をいえば冷却効果が2〜3時間くらい続くことですが、いきなりあれこれ望むのは無理でしょうから、もしロング走をするなら周回コースに2〜3セット分用意して、途中で交換するという使い方がいいのかもしれません。ショップによっては1セット3,000円以下で購入できますし。
繰り返しになりますが、万能アイテムではなく体感も個人によって違うかもしれませんが、理論的には確実に効果を得られるアイテム。暑さがつらくて走り込みができないというのであれば、ぜひデサントのコアクーラーもしくは、同じくAVA血管を冷やすアイテムをお試しください。