自分を知ること。それが成長するために最も重要なことです。それはマラソンでも同じで、自分を超えていきたいなら、自分の現在地をできるだけ正確に知る必要があります。そのために重要なのは、できるだけ同じ環境で走り続けること。
陸上競技場のトラックは、まさにそれに最適な場所ですが、マラソン初心者には競技性が高い感じがあって近寄りがたい雰囲気もありますよね。でも実際には走り始めた人こそ、まずは陸上競技場で走るのが理想。プロ・フィッツ杯はまさにそんな人のための競技会です。
プロ・フィッツ杯は速くない人が楽しめる大会
第1回大会もレポートしましたので、知っている人もいるかと思いますが、簡単にプロ・フィッツ杯について説明しておきます。プロ・フィッツ杯は陸上競技場のトラックで走ったことがない人や、ランニングを始めたばかりという人むけのイベントです。
プロ・フィッツ杯は初心者や初級者向けのイベントになっていて、種目は3000mと5000m、10000mの3つあり、それぞれにペースメーカーが付きます。もちろんペースメーカーよりも速く走るのもOK。ただしコンセプトとしては、ペースメーカーに引っ張ってもらって自己ベスト更新を目指します。
3000m 5000m | 7分/km 6分/km 6分30秒/km 7分/km |
5000m 10000m | 5分/km・5分30秒/km 5分/km・5分30秒/km |
5000m 10000m | 4分30秒/km・4分50秒/km 4分30秒/km・4分50秒/km |
スタートは3つの時間帯に分けられ、後半になるほどペースが速くなります。自分の走力に合わせて距離とペースメーカーを選んでエントリーできるので、ゆっくりペースの人と速いペースの人が接触することがないようになっているのが魅力。
ゆっくりペースの人にとって。キロ4分台の人が後ろから来るだけでも恐怖心がありますが、プロ・フィッツ杯はそこへの配慮をしっかりとしています。自分のペースで走れて、しかも引っ張ってもらえるので自己ベスト更新や目標達成ができるというわけです。
また、膝やふくらはぎなど気になる部分がある場合には、その場でプロ・フィッツのテーピングを貼ってもらえるサービスもあり、プロ・フィッツのタイツを借りて走ることも可能。初めて競技場のトラックを走った人や、自己ベスト更新した人はプロ・フィッツのランニングマスクをもらえるといった特典もあります。
前回から参加人数が大幅にアップ
第1回大会はまだ認知度も低く、申込期間が短かったのもあって小規模での開催になりましたが、今回は十分な募集期間があったのもあり、70名のランナーが参加しました。まだまだ規模は大きいとはいえませんが、大会としても着実にステップしています。
変化があったのは参加人数だけではありません。1回目の経験を活かして必要なところは改善し、良かったところは残しており、初めて参加した人たちもストレスなく、気持ちよくそれぞれの参加種目に集中できていたように感じます。
プロ・フィッツ杯は陸上競技場を走れるという魅力もありますが、それと同じくらい価値があるのが、ハイレベルな選手によるランニングクリニックです。ランニングクリニックは3回開催され、走力に合わせてシューズの履き方から、上半身の使い方まで幅広く学べる内容になっています。
大会の参加費は一般が2,500円なのですが、このクリニックは無料で3回とも受講することも可能。それだけで十分に元を取れてしまう濃い内容で、ランニング中級者レベルでも学ぶことがあります。参加者もかなり真剣な表情で、自分のレースに向けて何かひとつでも吸収しようという姿勢を感じます。
参加人数が増えたのもあって、前回ほどのアットホーム感は薄れてしまいましたが、これは大会が大きくなるときには仕方のないことで、それが薄れた一方で会場には活気がもたらされており、これはこれでいい雰囲気です。
まだ単独で参加している人も多いようですので、これがラン仲間と参加する人が増えてくると、さらに熱気が高まるはず。おそらくあと2〜3回の開催で認知度が高まって、仲間と一緒に挑戦する参加者も増えてくることでしょう。
強風のコンディションでもすべてを出し切れる
レースはと言いますと、11時スタートの第1グループは気温も程よく絶好の記録更新日和でしたが、後半になるにつれて風が強くなり、第3グループはバックストレートで真正面から向かい風にさらされるハードなコンディションになりました。
陸上競技場のトラックは安定して走りやすい路面ですが、このような天候だけはどうしようもありません。仮に風が弱かったら暑さにやられていた可能性もあり、この日は「そういう日」だったというだけのことです。いつでもベストコンディションではないのが陸上競技の面白さでもあります。
第1グループは比較的走力に自信がない人に適したペースだったのもあり、3000mも5000mも参加者はそれほど多くありませんでした。それだけペースメーカーに引っ張ってもらいやすく、マンツーマンでペースメーカーについてもらえている人もいて、かなり贅沢な環境でした。
第2グループも人数はそこまで多くありませんが、走力がワンランク上がったことで、参加者の気持ちが全面に出ており、タイムはともかく、まずはすべてを出し切るのだという気持ちが伝わってきます。最後まで気持ちが切れないというのが、トラックレースの魅力かもしれません。
少し悩ましいのが、参加者が自分の周回数がわからなくなるということ。前回は参加者が少なく、トラックレースに慣れたペースメーカーが周回数を管理していましたが、今回はペーサーから離れると自分でカウントしなくてはいけません。
トップの周回数は表示されますが、周回遅れになるともう「ラスト何周?」となってしまう人もちらほら。これはもう、慣れてもらうしかありません。もしくはGPSランニングウォッチで距離管理をするかラップ機能を使うかのどちらか。
陸上競技場慣れしていない参加者が多いので、周回数をカウントするコツなど伝えるクリニックがあっても良かったかもしれません。これから参加するという人は、ランニングウォッチのラップ機能の使い方を調べて、公園などの周回コースで事前に試しておくといいかもしれません。
あとは給水所の後にゴミ箱がなくてコップをどこに捨てればいいか困っている人もいました。これはゴミ箱を設置するだけなので、次回はきっと修正されているはず。
第3グループは、本来ならペースメーカーごとに集団になって、順番に風よけをするのが理想だったのですが、実際の展開はそれとは真逆になって、個々で走るので全員が風をもろに受けてしまうレースになってしまいました。
前に進んでいる感覚がないくらいの強風で、記録的には満足できなかった人もいたかもしれません。それでも気持ちを切らすことなく、黙々と前に進んでいる姿はグッとくるものがあります。これぞ陸上競技の魅力ですね。そこに速さは関係ありません。
さらに一体感があると人気のランイベントになる
今回はプロ・フィッツを展開しているピップ株式会社の社長も3000mのランナーとして参加していました。こういうランイベントや大会に、組織のトップが参加するというのはとても重要なことで、人気の大会、満足度の高い大会になる条件のひとつになっています。
トップが熱意を持って関わっていると、それを支えようと周りの人が熱くなります。プロ・フィッツにはその雰囲気があり、この大会を運営するスタッフは真剣さもありながら、笑顔も忘れず大会そのものを楽しんでいるように感じます。
そんなスタッフで運営される大会が魅力的にならない理由がありません。参加者に楽しんでもらう、喜んでもらうためには、まずは自分たちが心から楽しいと思えること。これはマラソン大会にかぎらず、すべてのサービスやエンターテインメントの基本。
もちろんまだ2回の開催ですので、まだ足りない部分はあります。大会としての伸び代もまだまだあります。たとえば参加者の目標達成や自己ベスト更新を、みんなで共有できるような仕組みがあると参加者に一体感が生まれます。
誰かが自己ベスト更新して、それを周りの人が称える仕組みがあれば「自分もがんばろう」というモチベーションにもなります。自己ベスト更新者をちょっと大げさなくらい持ち上げる。プロ・フィッツ杯はそういう色が似合いそうです。
ただそれがなくても、ほとんどの参加者が走ってよかったと感じているはずです。やはりすべてを出し切るのは気持ちがいいものですから。それができるのもプロ・フィッツ杯ならではです。今後も開催される予定ということですので、気になっている人はプロ・フィッツのSNSをフォローしておきましょう。
Twitter:https://twitter.com/ProFits_PIP
YouTube:https://www.youtube.com/user/PipSportsTaping/featured
プロ・フィッツ中の人ランニングチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UCWdY71Wq02wgewqpeg0SMSA