日本一早いマラソンレポート「東京マラソン2024」

コロナ禍前は同日開催の鹿児島マラソンがお気に入りで毎年に出場しており、東京マラソンを観戦するのはかなり久しぶりになります。ただ、実際に観戦してみると、やっぱり別格だなと感じました。今年は例年以上に外国人参加者が増えて国際色豊かな大会になっていました。

ただ、本質的に大事なのはそこではなく、運営の意図が末節まで行き届いているかどうか。理念を振りかざしても現実的にそれができでいない大会も少なくありません。東京マラソンが他の大会と比べでどうだったのかをレポートしていきます。

目次

荷物預けなしは面白い試み

東京マラソンはコロナ禍での開催を実現するためにデフォルトでの「荷物預けサービスを終了しました。スタート地点で預けた着替えなどをフィニッシュエリアで返すのがマラソン大会の常識でしたが、そもそも返さなくてもいいんでにいかあという議論があったのでしょう。

他のマラソン大会と違って、東京マラソンは参加人数も多くて、荷物預かりをするにしてもかなり効率が悪いという課題があります。スタート地点とゴール地点が違うので、荷物預けは当然のサービスに思えますが、現実問題として、そこに人手がかかります。

だから荷物預けを有料化するというのは賢い考え方です。そもそもゴールしてから荷物の受け取りまで一km近く歩かされる(日比谷公園受け取りの場合)のも理不尽な話。ただ、いろいろ不満が出そうだなと思っていたのですが、やってみると意外スムーズです。

家族や友人が待っていて、荷物をフィニッシュエリア近くで持っていてくれれば、着替えずに会場を後にできるわけです。運営側としてこれを採用すべき理由は2つあります。荷物の返却に人手をかけずに済むことと、雨対策ができるということです。

今年の大阪マラソンは雨だったこともあり、荷物預けも引き取りも泥まみれになる同然となっていて、ランネットの評価も低いものとなりました。おそらく晴れていたらランネットの評価は15点くらい高かったほどいい大会でしたが、雨の荷物預けで大きなマイナスとなりました。

でも荷物預けを自分で選べるようにすることで、その怒りの矛先が大会運営側に向くのを最小限に抑えられます。さらに荷物預けがなくなることで、スタートエリアへの監視をしやすくなり、スタートエリアでのトラブルを最小限に抑えられます。

晴天にも恵まれて途切れない声援

昨年の東京マラソンはコロナ禍での開催もあり、声出し応援が自粛されていたというのもあったからか、今年は沿道からの応援が続き、ランナーとしては走りやすい環境にありました。やはり声援があるのとないのとでは大会のイメージが大きく異なります。

これほどの応援がある大会は国内でも限られており、私が知る限りでは愛媛マラソンくらいです。ただ、沿道の声援が水ものであることは、大阪マラソンでもはっきりしています。天候が良ければ沿道には多くの人が詰めかけますが、雨が降ると沿道はかなりさみしいことになります。

ただ繰り返しになりますが、愛媛マラソンでは雨の中の開催にも関わらず、多くの応援者が沿道を埋め尽くしていたので、すべてを天候のせいにするわけにもいきませんし、悪天候であっても応援に行きたいと思える大会になるかどうか、そのような企画を用意しているかどうかが、今後は問われることになります。

東京マラソンの規模にもなると、ただそつなくマラソン大会を開催できただけでは満足してもらえないというのが大変そうなところですが、今の東京マラソンの運営ならそれを乗り切るだけの能力を持った人がいて、安心して見ていられます。

少なくとも関係者はより良い開催になるために尽力しています。都営地下鉄浅草線では道路を渡りたい人のために、ホームを通路として使えるように、無料の紙チケットを手渡ししていました。このような配慮ができているのも東京マラソンだからこそです。

東京マラソンを開催するうえで考えられるトラブルに対する対処方法はほぼ事前に共有されており、現場がそれに対してどう動くべきかがはっきりとしている。それが枝葉末節まで意思統一されているのは、世界広しといえども東京マラソンくらいかもしれません。

応援者は初心者であることを意識すること

すばらしい大会だったというのがRUNNING STREET 365としての総評ですが、いくつか気になった点を挙げておきます。まずひとつは応援する側にとってはそこそこストレスがかかる大会でした。私はあるランナーを追って応援していたのですが、応援ナビが35km地点を通過した2秒後に40kmを通過したと表示していました。

別に東京マラソンの運営に問題があるわけではありませんが、応援ナビというサービスを利用している以上、そこに精度の高い情報を提供する義務があります。私は比較的マラソン大会を知っている人間なので、誤作動であると判断できますが、そうでない人はかなり混乱していました。

さらに東京マラソンに限ったことではなく、応援ナビはスタートしてからしばらくは、情報の後悔がスムーズにできません。とっくにスタートラインを超えているのに、まだその表示がなく、応援したい人を見逃している人が多々いました。

マラソン大会に慣れていれば「そうなるよね」で済むことですが、東京マラソンで応援する人のほとんどが、始めてマラソン大会での応援をするわけです。そのような人に、きちんとアナウンスされる環境があるといいなと、沿道から東京マラソンを追いながら感じました。

そして、やはりマラソンに興味がない人にとって、道路が分断されることがかなり困ることであり、東京マラソンに対してネガティブな印象を持つ人もいます。とはいえ、すべての都民に理解してもらえるわけでもなく、その結果として苦情を正面から受け止めるスタッフがいるということを、頭にいれておいてもらいたいところです。

また、外国人の受付がスムーズでなかったと聞いています。大会受付で外国人のレーンが限られていて、日本人は平日ということで他のレーンがガラガラだったのに、外国人のレーンだけが大行列だったそうです。こういうところは今後に改善されることを願っています。正直外国人受付をなしにしてもいい気がします。

マラソンはまだまだ終わっていないけど慢心してはいけない

コロナ禍前からマラソンブームに翳りが見えており、そしてコロナ禍を経てマラソンブームは完全に終わってしまいました。マラソン大会の多くは定員割れしており、待っているだけではランナーは集まらない状況にあります。

ただ、それは東京マラソンは別で、東京マラソンはブランド化に成功しており、黙っていても参加者は定員を超えて、抽選により走れたり走れなかったりします。これは勘でしかありませんが少なくとも10年は東京マラソンは安泰で、国内では並ぶもののない大会になります。

しかも今回は例年以上に海外ランナーが増えている感じがあり、海外のランナーが東京マラソンを意識するようになっていることがわかります。そういう意味でも「東京マラソンブランド」は、これからもしばらく維持されるはずです。

でもそこにあぐらをかいていたら、大阪マラソンや愛媛マラソンのような新しいことにチャレンジし続けている大会に取って代わられる可能性はあります。もちろん、少なくとも今の運営スタッフなら「東京マラソンは日本一のマラソン大会」と言えます。でもスタッフが代わったなら、運営のトップに情熱のない人が立ったなら、あっという間に転げ落ちていきます。

もちろんそうなって欲しくないという思いはあります。東京マラソンはまだ、日本のマラソン業界を引っ張ってもらないなと本当に冬の季節を迎えることになります。そのために不足していることはまだまだいくつもあります。

とはいえ東京マラソンが、現状でNo.1であることは揺るぎないと感じる1日でした。ただ、すべての人が満足できるかというと、まだその領域にはありません。だからこそ期待します。きっと来年の大会はさらに魅力的な大会になるということを。現状維持で満足せずに、さらに上を目指してもらいたいところです。

▼東京マラソンEXPO 2024のレポートはこちら

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