アフリカの子どもたちにシューズを贈りたい。そんなプロジェクトが2009年から始まっています。「スマイル アフリカ プロジェクト」その先頭に立っているのは、シドニーオリンピック・マラソンの金メダリスト高橋尚子さんです。
高橋尚子さんとソトコトが協力をし、シューズをアフリカに届けるだけではなく、毎年アフリカでマラソン大会も開催することで、アフリカの子どもたちが自ら輝くための活動を行っています。
一足のシューズで救われる命があります。アフリカの子どもたちの足を破傷風などの危険から守るため、「スマイル アフリカ プロジェクト」は活動を始め、すでに8万足以上のシューズがアフリカの子どもたちの手に渡りました。
そんな「スマイル アフリカ プロジェクト」によるランニングイベント、スマイル アフリカ プロジェクト ランニングフェスティバル 2016が、11月3日に東京有明で開催されました。
決して大きなイベントではありませんが、主催者と参加者の距離が近く、そして高橋尚子さんの一生懸命さが伝わってくるランニングイベントです。「みんなのランニングで日本とケニアをつなごう」ということで、参加したみんなの総走行距離を日本からケニアのナイロビまで、11300キロを繋ぐことがひとつの目標になります。
種目は親子マラソンと3時間リレーの2種類で、親子マラソンは親子で1キロの距離を競います。3時間リレーはチームで1周2キロのコースを襷でつなぎますが、どちらも順位は出るものの、上位を表彰することもなく、競い合いというよりは一緒に走ることを楽しむランニングイベントです。
一緒に走るということでは、今回は車いすランナーと同じ周回コースを走ることができ、車いすの体験もすることができるイベントになっています。シドニーパラリンピック車いす800m銀メダリストの廣道純さんなど、現役の短距離・長距離の車いすランナーがゲストランナーと参加しています。
メイン会場は武蔵野大学有明キャンパス。大学の講義があるという理由で受付時間は朝の7時30分からと少し早い時間ですが、多くのランナーがこの日を楽しみにしていたようで、他のマラソン大会にはない、穏やかな雰囲気に包まれています。
履かなくなったシューズの無料回収には、ランニングシューズを回収してもらう人が次々とやってきます。最終的に集まったシューズは240足以上。もしこのイベントがなければ、240足以上のシューズが捨てられていたのかと思うと、少し複雑な気持ちになりますが、これによって240人以上のアフリカの子どもたちの足が救われるというのも事実です。
開会式の後、すぐに親子マラソンがスタートします。ちびっ子とお父さん、お母さんが一緒に走りますが、親をおいてさっさと走っていく子もいれば、親の手をしっかり握って走る子もいます。3才くらいだと1キロの距離でも大変で、途中で走るのをやめてしまう子もいます。
そんな子どもを抱きかかえて走るお母さんや、なんとかなだめてゴールに向かわせようとしたり、それぞれの形で親子マラソンを楽しんでいます。ゆるい感じのイベントにほのぼのした空気が流れ、ぽかぽか陽気がさらに会場の雰囲気を和らげます。
そしていよいよ3時間リレーマラソンのスタートです。
3時間リレーマラソンですから会場の空気はピリピリ・・・なんてことはなく、普段ほとんど走らない参加者がほどよく緊張をしているくらいで、高橋尚子さんの行う準備運動によって体も心もほぐれていくのが伝わっていきます。
このイベントはずっと高橋尚子さんがマイクを握っています。走っているときと、車いすの体験コーナーに足を運んでいるとき以外はずっとマイクを握って、トークでランナーたちを後押しします。高橋尚子さんがよく喋ることは知っていましたが、ほぼ独演会状態で順番待ちをしているランナーを盛り上げます。
高橋尚子さんが走るときは、コースを逆走する形で、コース上にいるすべてのランナーとハイタッチをしながら颯爽と駆け抜けていきます。トータルで2周走ったので、運のいい人は2回ハイタッチ。ハイタッチできなかったランナーも高橋尚子さんを大きなマラソン大会ではありえないほど近くに感じることができます。
ゲストランナーと普通のランナーという関係ではなく、ひとつの目標に向かって走る仲間のような関係がここにはあります。
コースはほぼ直線なのですが、何度もアップダウンを繰り返すコースで、一般のランナーも苦しみますが、車いすの選手も懸命に坂道を上がっていきます。上り坂では必死に車いすについていこうと頑張る人も、下り坂になるとあっという間に離されてしまいます。
下りでは車いすのスピードは40km/hにもなるため、走りではとてもついていくことができません。そんな車いすのトップアスリートを間近で感じることができるのもスマイル アフリカ プロジェクト ランニングフェスティバル 2016の魅力です。
普段のマラソン大会では車いすの部があっても、車いすが先にスタートしますので、そのスピードをあまり感じることができませんが、このイベントでは車いすに何度も追い抜かれます。そして巧みなコーナーリングを目の前で見ることも出来ます。
車いすの体験コーナーで、実際にマラソン用の車いすに乗った人は、その操作の難しさを経験し、トップアスリートたちの技術の素晴らしさを改めて実感していました。車いすの体験コーナーでは高橋尚子さんが車いすの操作を教える場面もあり、多くの参加者が競技用車いすの奥深さを体験していました。
コース上ではランナーたちが何度も襷をつなぎ、あっという間に3時間が経過。最後はチーム全員でゴールを目指します。リレーマラソンでは、ゴールが混雑するから全員でのゴールをさせてくれないことが多いのですが、この大会では全員で手を繋いでゴールが必須です。
タイミングによっては高橋尚子さんも一緒に手を繋いでゴールしてもらえます。
この大会、ものすごくリピーター率が高いのですが、ここまで高橋尚子さんに近づける大会は他にありませんし、何よりもアフリカの子どもたちのために何かをしたいという高橋尚子さんの気持ちがすべての参加者に伝わっていくため、一度参加すると「また次回も参加しよう」という気持ちにさせられます。
走ることでできることがある。ランナーだからできる支援がある。スマイル アフリカ プロジェクト ランニングフェスティバル 2016はそれを証明するためのマラソン大会です。
すべてのランナーがゴールした後の閉会式で、ソトコトと高橋尚子さんがアフリカで行っている支援の報告がありましたが、そこにいるすべての人たちが真剣な表情で話を聞き入っています。そして自分たちがシューズを提供したことの意味を改めて心に刻みます。
すべての参加者の総走行距離は1432キロで、トータルで5572キロ。今回でケニアまでの距離の半分に到達しました。このペースでいくとあと4年はかかりますが、できることなら東京マラソンのある2020年には達成したいところ。
そのためにはもっとたくさんのチームの参加が必要です。そしてこの大会はもっとたくさんのチームが参加すると、さらに楽しいイベントになります。
高橋尚子さんとソトコトのプロジェクトに共感できる人、自分の一歩を何かの役に立てたいと考えている人は、ぜひ仲間を誘ってスマイル アフリカ プロジェクト ランニングフェスティバルに参加してみませんか。
個人での参加もできますので、仲間が集まらなければ個人で集まった人たちで秋の有明を高橋尚子さんと駆け抜けましょう。でもやっぱり仲間と一緒に参加するのが理想です。ピリピリした雰囲気もなく、ただ純粋に走ることを楽しめます。これまで一歩も走ったことのない人だって楽しむことが出来ます。
もちろん出ると決めたら練習はしておきましょう。
まだ履けるけど使っていないシューズがあるなら、このイベントのために捨てずにとっておいてください。その一足がアフリカの子どもたちの足を守ります。その一足で救われる命があります。
来年はぜひ使わなくなったシューズと一緒に有明を訪れて、スマイル アフリカ プロジェクト ランニングフェスティバルに参加してみませんか?この大会ならたくさんの笑顔に出会うことでき、そしてあなたも最高の笑顔で走ることができます。
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