RUNNING STREET 365 編集部に突然に送られてきた黄色いAdizero Adios ProとADIZERO SPEED CHALLENGEの招待状。そこにはこう書かれている。「あなたを2020年のPBを更新する自分との戦いへご招待します」。実施期間は2020年12月1日〜12月31日までとなっている。
場所はどこでもいいらしい。距離も問わない。ただアディゼロ アディオス プロを履いてPBを更新しろという指令。もちろん受けるしかないのだが、今シーズンはマラソン大会もなく、スピード練習など一切していない。いや、それどころか自転車を漕いでばかりでまともにランニングすらしていない。
だがやるしかない。
距離は5kmで19分切りを目指す
アディゼロスピードチャレンジはどの距離を走っても良いのだが、「スピードチャレンジ」となっているので、スピードが出なければ意味がないだろう。しかもアディゼロ アディオス プロを履くのだからそれなりのスピード領域でないとシューズのポテンシャルを引き出せない。
そう考えるとフルマラソンやハーフマラソンという選択肢はなくなる。スピードに重きを置くなら、1kmか5kmということになる。別に2kmでも3kmでもいいのだが、今シーズンの記録が残っているのが1kmと5kmだけだったという理由もあるのだが、せっかくだから5kmを選ぶことにした。
今年の5km最速タイムは皇居の練習中に記録した19分2秒。こういうときStravaにデータが残っていてありがたい。2月24日になっているので、愛媛マラソンを走った後で体も絞れていたし、キレもあったのだろう。ちなみにStravaでは1kmの自己ベストが2分41秒になっていたがGPSの計測ミスだろう。1kmの自己ベストは3分19秒程度だったはず。
いずれにしても、この19分2秒がターゲットになるのだから、目標タイムは19分切りということにしておいた。思うように走れなかったこの1年の締めくくりに、18分台を出して気持ちよく終わりたいという思いもある。3分48秒/kmで走りラストスパートをすれば達成。アディゼロ アディオス プロならきっと……
2kmも走れずに撃沈
恐ろしいことが起きた。この日のためにコンディションも整えて、仕事も控えめにしてアディゼロスピードチャレンジを迎えたにもかかわらず、なんと5kmを走り切ることができなかった。いや、5kmどころの話ではない。1周約1kmのランニングコース、2周目の途中で止まってしまった。
シンプルにオーバーペース。最初の1kmが3分34秒になっていて、設定ペースの3分48秒を大幅に上回っている。アディゼロ アディオス プロはスピードを出しやすいシューズで、それなりに抑えて走ったにもかかわらず、オーバーペースになり、息が上がってストップしてしまったのだ。
どれくらいオーバーペースかというと、1マイルのベストタイム5分52秒を叩き出したほど。1マイルの挑戦をしたことがなかったというのもあるのだが、そんなペースで5kmを走れるわけもなかったのだ。ただ悔しさもあるので、とりあえず息を整えてリスタートしたが、やはりオーバーペースで1kmごとに止まってしまう。
足が止まるたびに時計を止めたので、タイムとしては18分47秒。まったくもって納得できない。スピードをコントロールできなかった自分自身に。そして、これをPB更新とは言えないということで再チャレンジを決めた。
筋力不足を痛感させられた2回目
再チャレンジを決めたものの、12月は師走。仕事のスケジュールも詰まっており、ようやく2回目のアディゼロスピードチャレンジをするための時間を確保したものの、前日と前々日に50km以上も自転車を漕いでおり、手首に巻かれたポラールは「オーバートレーニング」と警告している。
だが、たった5kmなのだと自分を奮い立て、再び近所の公園へ向かった。前回の反省はオーバーペースだったので、今回は時計でペースを確認せずに、感覚だけでスピードを十分に抑えて走ろうと決めた。だからスタートからゴールまで1度もペースを見ていない。
「これ以上は失速する」と感じたペースで走れば、きっとそれなりのタイムになるはずだ。皇居ランの19分2秒もそうやって出したのだ。
こんなにバラつくとは思わなかったが、結果としては20分17秒という笑えないタイムに。体が重たかったのもあるが、走っている途中はスピード感もあり、少なくともキロ4分は切っているつもりだったのに、1〜2kmに関しては4分12秒もかかっている。
4〜5kmで3分台になっているが、このラップは自分でもきれいにシューズの反発をもらえていた感覚がある、特に親指部分のロッドがしなっているのが感じられ、疲れているのに前に進んでいて「これがアディゼロ アディオス プロで走るということか」と思いながら走っていた。
だが結果がともなっていない。これは明らかに筋力不足が原因だろう。今シーズンはスピード練習を一切行っていないし、筋トレも昨年の半分以下。45歳という年齢でスピードを維持するには筋トレは欠かせないのだが、レースがないから筋トレをするモチベーションがない。
サボっていたツケがここにきて出てしまったことになる。まさか20分を切れないなんて思いもしなかったのだが、これが現実だ。いくら速く走れるランニングシューズを履いたところで、器ができていないとどうにもならないのだ。
意地とプライドをかけた3回目の挑戦
筋力不足は数日で改善できる話ではない。シーズンを通して体作りを行うものなので、いまさら筋力が戻ってくるなんてことはない。だが、私にもサブ3を目指したランナーとしての意地がある。さすがに20分は切っておきたいということで3回目の挑戦を敢行した。
今回は前々日に練習会で5km程度走って、筋トレもしているが、前日はノーランで疲労も十分に抜いておいた。これで疲れていたという言い訳はできなくなったが、前回よりも明らかに体が軽い。こうなると今度はオーバーペースが気になるので、今回は1kmごとにペースを確認する。
最初の1kmが3分46秒。19分を切れるペースなのだが、今の自分にそこまでの走力がないことはすでにわかっているので、ここでペースを落とす選択。ここからキロ4分ペースを維持すれば20分を切れるわけだから、最低限の目標は達成できる。
ところが2km通過のラップタイムが4分2秒、3kmが4分3秒と徐々に貯金が食いつぶされていく。そして4km通過のラップタイムは4分5秒で、ここからペースアップができなければ、目標達成ができなくなるところまで追い込まれてしまった。
残り1km。ここからは気持ちの勝負ということで、集中力を高めてギアを1段上げる。心臓が飛び出そうだし、吐きそうなのだが止まるわけにはいかない。これが2020年の締めくくりになる。最後まで上手くいかなかったでは、残念な気持ちで新年を迎えなくてはいけなくなるのだ。
ラストラップは3分57秒でトータル19分53秒。なんとか意地で19分台には手が届いた。達成感と悔しさで複雑な気持ちだが、ここが現在地ということなのだろう。結果は変わらないが、この気持を忘れずに2021年をスタートすればいいのだ。
2021年に向けてここからがスタート
挑戦したからこそ自分の不甲斐なさに気づけた。そういう意味ではアディゼロスピードチャレンジに誘ってくれたアディダスに感謝している。挑戦していなければ筋力不足を痛感することなく2021年も2020年と同じように走り続けて、走力を下げていったのだろう。
失敗したことで自分に足りないことが明確になり、鍛え直すための覚悟が決まった。マラソン大会がないことを言い訳にせず、いつまでも理想の走りができる自分であること。そのために必要なことを一つひとつ積み重ねていくしかない。マラソンランナーは1日にして成らない。
ここをスタートにして、冬の間にしっかりと鍛えておくとしよう。そして春先にもう1度5kmのスピードチャレンジを行って、目標だった19分切りを目指すことにした。おそらく厳しい戦い、長い道のりになるがこの悔しさを忘れずに前へ進むとしよう。