ランナーにとって食事は、走れる体を作るうえで「トレーニング」「睡眠」に並ぶ、とても重要な要素のひとつです。ところが実際には多くのランナーが食事における栄養について無頓着で、食事で走りが変わるという意識が不足しています。
「いま何を食べるべきか」を常に意識することが、ランニングと真摯に向き合うための基本中の基本となります。そこでここでは、ランニングと栄養がどのように関係するのかについて説明し、効率よく走力を上げる方法について解説していきます。
ランナーに必要な栄養素
まずはマラソンなどを走るランナーにとって、必要となる栄養素について説明します。ランナーに必要な栄養素には、以下のものがあります。
- 炭水化物:走るためのエネルギー源として最も重要
- タンパク質:筋肉の修復と回復に不可欠
- 脂質:長距離走では重要なエネルギー源
- ビタミンとミネラル:体の機能をサポート
- 水分:積極的な給水はパフォーマンスと回復に影響します
いわゆる5大栄養素はすべて必要で、それに加えて水分も必要になります。それぞれの栄養素とランニングの関係につてい詳しく見ていきましょう。
炭水化物とランニングの関係
炭水化物はランニングにおける主要なエネルギー源になります。脂肪もエネルギー源になりますが、走り出しに必要となるのが炭水化物で、これが不足していると長い距離を走り続けることができません。特に記録を狙って速いペースで走る場合には、どれだけ体内に炭水化物を貯めておけるかでレースタイムが決まります。
また炭水化物にはトレーニング後の回復を促す効果もあります。糖質制限ダイエットが流行ったことで炭水化物は悪者というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、ランナーが糖質制限をするのはランニングと真摯に向き合うことを放棄する行為だと考えてください。
タンパク質とランニングの関係
タンパク質は体の土台づくりに必要な栄養素で、長い距離を走ったことで損傷した筋繊維を速やかに修復する役割を担っています。タンパク質が不足していると筋繊維の修復が遅れてしまうため、どれだけトレーニングをしても走力が上がらないどころか、体内にダメージを蓄積させてしまいます。
ちなみにタンパク質にもカロリーが含まれているのでエネルギー源になると考えている人もいるようですが、分解に時間がかかり、摂取してすぐにエネルギー源にできるわけではないため、レース直前やレース中の補給には不向きです。基本的には走れる体の土台となる筋肉や骨、血液などの材料になる栄養素だと考えてください。
脂質とランニングの関係
脂質も体重を落としたい人に嫌われやすい栄養素のひとつですが、マラソンのような長距離を走る場合、人間の体は脂質を主なエネルギーにするため、炭水化物だけでなく脂質も摂っておく必要があります。さらに脂質は細胞膜の構成要素であり、ホルモンの生産にも必要な栄養素で健康な生活を送るには必須です。
ただし、レース当日や前日に摂取すると胃もたれをして、レースで思ったようなパフォーマンスを発揮できなくなることもあります。普段の食事で積極的に摂取しておき、レース直前には摂取量を減らすなどの工夫が必要になります。
ビタミン・ミネラルとランニングの関係
人間の体にはさまざまな機能がありますが、それらの機能をサポートするのがビタミンやミネラルなどの役割になります。たとえばビタミンCは免疫機能を強化し、ビタミンDは骨の健康をサポートします。鉄は酸素の運搬を助け、カルシウムは筋収縮に必要でになります。
特定のひとつだけが重要というのではなく、どの栄養素もトレーニングの効果を最大化し、回復を促すのに必要です。ただし、ランナーの場合には足を地面に何度も叩きつけるので、骨を強くするためにカルシウム、赤血球を増やすための鉄分の補給を特に意識しなくてはいけません。
また日本人は塩分を取りすぎと言われているため、塩分を控えめにしているランナーもいますが、ランナーは大量の汗をかくのでむしろミネラル不足になりがちです。推奨されるだけのミネラルでは不足してしまうので、意識的にミネラルを摂取する必要があります。
水分とランニングの関係
ランニングと水の関係については、あえて細かく説明する必要はありませんよね。ランナーは水がなければ走り続けることができませんので、ランニング前後だけでなく、ランニング中も適切に補給する必要があります。水が不足すると関節のケガなどもしやすくなり、回復も遅れるので、常に十分な量の給水をするように心がけてください。
食事バランスガイドに従って献立を考える
ここまでの説明で、ランナーだからといって特別な栄養素が必要になるわけではないことを理解してもらえたかと思います。炭水化物もタンパク質もその他の栄養素もすべて大切で、どれも欠かすことができません。運動というのは日常生活の負荷が大きくなっただけですので当然といえば当然です。
このため、どの栄養素をどれくらい食べればいいのかという考え方も、基本的には厚生労働省と農林水産省から出されている「食事バランスガイド」をベースに考えます。ごはんやパンなどの主食をメインにして、野菜などの副菜も多めに食べます。それに主催を組み合わせ、牛乳や果物で補うというイメージです。
外食や内食が中心になると不足しがちなのが副菜です。毎日の食事を振り返ったとき、主食と主菜だけで完結しているという人も多いかもしれませんが、それでは適切に栄養を補給することができません。サラダや味噌汁、野菜炒めなど副菜を1食ごとに1〜2品つけるように心がけてください。
でもそんな普通の食事だとカロリー不足になるのでは?と思うかもしれませんが、それは全体の量を調整することで解決します。主食も副菜も主菜も全部増やせばバランスを崩すことなくカロリー不足も解決できます。
ランニング後はすみやかに補給すること
マラソン大会を走り終えたあと、自宅に帰るまで食事をしなかったり、トレーニングをしたあとにシャワーを浴びてから食事をしたりする人もいますが、効率のいい栄養補給を考えるなら、走り終えたら時間を空けずにすみやかに補給するようにしてください。
どうしても食べることができない状況であれば仕方ありませんが、近所にコンビニやスーパーがあるなら、惣菜パンとオレンジジュースを買って帰るのがおすすめです(イートインでも可)。惣菜パンはできるだけタンパク質が多く含まれているものを選ぶのがおすすめです。迷ったら肉まんを選びましょう。
お店に菓子パンしかない場合には、菓子パンと牛乳もしくは飲むヨーグルトと組み合わせるようにして、炭水化物とタンパク質をしっかり摂ることを意識してください。ビタミンやミネラルはその後の食事で補給するのでも構いません。大事なのは炭水化物とタンパク質、そして水分です。
ランニング後にしっかり食べてしまうと食事が食べられなくなってしまうという場合には、アミノ酸のサプリメントや牛乳だけでも構いません。大事なのはすぐに補給をするということです。ランニングは走り終えた瞬間から次のランニングの準備が始まります。次のトレーニングに疲労を残さないためにも、ランニング後にはきちんと栄養補給を行ってください。
ちなみにRUNNING STREET 365としておすすめしている食材のひとつに「アサイー」があります。アサイーには造血作用があるとされており、貧血対策に有効な食材になります。アサイーの有効性については別記事がありますので、そちらをご参照ください。
ランニングでダイエットしたいときの栄養について
もしランニングをする目的がダイエットだった場合には、走ったあとに栄養補給すると太ってしまうのではないかと不安になって、空腹をガマンする人もいるかと思います。でも「食べない」という選択肢はありません。ダイエット目的であっても適度に炭水化物とタンパク質を摂る必要があります。
もちろん食事は食事バランスガイドに従って献立を考えます。ビタミンとミネラルも必要ですし、水分補給だって忘れてはいけません。でも、そうなると体重が減らないのでは?と疑問に思いますよね。でもダイエットをするときに大事なのは消費カロリーが摂取カロリーを上回るということだけです。
ですので、ランニングでダイエットをしたいときには、栄養価が高く低カロリーなものを選ぶというのが基本スタンスになります。
- 鶏むね肉
- ささみ
- 卵
- 青魚
ダイエットをしたい場合には、これらの食材を主菜に使いましょう。ただし、これらの食材ばかりを使っていると、今度は脂質が不足して、細胞膜やホルモンに問題が起きてしまいます。オリーブオイルを使って調理するなどの工夫をして、脂質不足にならないように注意してください。
そもそもランニングでのダイエットの場合、体重は緩やかにしか落ちていきません。1ヶ月で500gも落ちれば十分ですので、食材にこだわるよりも、食事バランスガイドをベースにして、食べる量を少し減らすというのが最適解です。必要以上に食事制限するのではなく、間食をやめるなどして摂取カロリーを抑えてください。
まとめ
ランナーは速くなるためにいろいろと工夫をして、食べるものについても最新の情報に対してアンテナを張り、積極的に取り入れている人が少なくありません。でもときどきそれが間違った方向に向かうことがあります。ランナーであっても、そうでなくても、食事の基本は「食事バランスガイド」の通りです。
食べる量が増えるか減るかの違いで、特別に摂取すべき栄養素もなければ、削ってもいい栄養素もありません。ただし、ランナーは骨に衝撃を与えて、なおかつ貧血にもなりやすい傾向にあり、さらには汗でミネラルが流れてしまうので、カルシウムと鉄分、ミネラルは意識して摂取する必要があります。
それ以外は炭水化物もタンパク質も脂質も重要な栄養素です。糖質制限のような偏った食事は一時的に効果があってもランナー寿命を縮めてしまう可能性があります。あまり難しく考えず、痩せたいなら全体の量を減らし、しっかり走るなら全体の量を増やすという考え方で、栄養素の過不足がない食事を目指しましょう。